ドルフィンキーパーとは!

|  ブルーインパルス雑学  |
 ブルーインパルスがショウを行う為には、様々な人たちが係わっている。中でも青い展示用の整備服を身にまとった列線整備員、通称“ドルフィンキーパー”に今回はスポットを当てて紹介していこう。
◆ショウでの立ち位置
 ショウ本番である航空祭では、予備機を含む各機に3名のドルフィンキーパーが付く。
 その立ち位置は、機体を管理する機付長が機体正面のNo1ポジションに付き、機体左翼側にNo2ポジション、機体右翼側にNo3ポジションの整備員が配置に付くように決まっている。ただし、ドルフィンキーパーは、パイロットのように1番機〜6番機のポジション番号によって固定されるのではなく、機体を管理する機付長以外は、その時のローテーションによって割り当てられる機体が異なっている。
 それぞれのポジションの役割は、No1ポジションは機体正面に位置するので、中心から機体を見て全体の動きを把握し、No2、No3ポジションは後ろから左右の細かい動きをチェックしている。

◆ロープの向こうは常に実戦。
 機体の整備をおこなうドルフィンキーパーには、特別練習と本番の区別はない。彼らは、常日頃から飛行機を安全かつトラブルが無いように整備・点検し、そして、飛行機を安全に送り出し安全に戻すことを任務としている。日々行われている松島基地での飛行訓練であれ、航空祭のショウ本番であれ、機体を安全に送り出し、そして戻すという行為に何一つ変わりはない。ある整備員は、「キーパーの仕事は、何も特別なものではありません。全国の航空自衛隊の整備員も同じことをやっています。ただ、航空祭本番はショウアップする為に動作を揃えたりしていますが、それ以外は何も変わりはありません」と語ってくれた。
 航空祭本番では、ウォークダウン、エンジンスタート、プリタキシーチェック、ウォークバックなどの一連の流れもショウの見所の一つとされ、整備員の動作も一糸乱れぬ整然とした動作でショウアップされている。一見するとその姿は何かのパフォーマンスを見ているかのような錯覚さえ覚える。しかし、航空祭で張られたロープ一本を隔てた向側では、安全に飛行機を飛ばす整備員達の実戦が常に繰り広げられているのだ。

◆ブルーインパルスの一員として
 他の部隊と何ら変わりの無い機体整備を日々行っているドルフィンキーパーといえ、やはりそこにはブルーインパルスの一員としての姿を垣間見ることができる。
 ブルーインパルスで使用されるT-4は、他の部隊では行わないアクロバットを中心としたフライトを行う。その為、アクロ機ならではの負荷が掛かるという。当然そのことにより、点検項目も通常のT-4とは異なり、些細な異変も見逃すことがないよう目を配り整備作業を行う必要があるという。
 また、ブルーインパルスのT-4は、人に見せることを目的とした機体のため、いつもぴかぴかに磨きこまれている。このシーンは時折DVDなどでも紹介されているが、フライトごとの定期的な清掃はもちろん、ショウ本番を目前にした展開前日には、自主的に居残り、車輪や、一般観客の目には触れることのない細部に至るまで徹底的に磨きこむという。
 そして、最後に、もうひとつブルーインパルスの一員ならではのエピソードを紹介しよう。ブルーインパルスは航空自衛隊の広報部隊のため、他の部隊とは違い、一般観客を前にして展示飛行を成功させることをミッションとしている。言わば、航空自衛隊と一般の人たちの橋渡しをしているのである。航空祭本番では、展示飛行が無事終了した時に観客から盛大な拍手や声援などが贈られる。この時ばかりは目に見える形で自分達がやっていることの成果が実感できるという。まさにこの時が、ナレーションにもあるように、ショウの成功をパイロットと握手で分かち合う瞬間なのだ。
 ドルフィンライダー達が大空を自由に飛びまわるアクロのプロフェッショナルであるように、ドルフィンキーパーはプロのエンジニア集団なのだ。航空祭に出かけた際は、彼らにも注目してみよう。

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